『銀河鉄道の夜』を読んだのは、比較的大きくなってからでした。確か高校生ぐらい。。。
中学生には芥川龍之介やら、夏目漱石、ハイネにディケンズなどなど、結構いろいろ読みあさっていましたが、なんとなく、宮沢賢治に触れることがなかったのです。
今思えば、小中学生の時に読んでおくべきだったなと思います。その後何度も再読していますが、読後感が変化し続けているからです。
初めてのときは、そのストーリーを理解し、隠された意図を必死で探ろうとしました。大人になってからは、一つ一つの美しい描写に感動しました。そして現在、宮沢賢治が亡くなった年齢を越え、登場人物たちの言葉に胸が締め付けられるような、それでいて心が穏やかになるような、不思議な魅力にとりつかれています。
『銀河鉄道の夜』は不朽の名作です。少年が親友とともに銀河を旅する・・・幽玄でもの悲しく、風が吹き抜けるような匂いと柔らかい光が感じられる、とてもとても美しい文章が綴られていきます。
この物語は、児童書や文庫本はもちろん、舞台や映画など、さまざまな形で愛され続けています。しかし、私は一貫して手にしているのは文庫本の一冊のみでした。文章だけを楽しみ、その世界観を自分だけのイメージにしていたかったのです。ですから、映画など、画像があるものは見る気がしませんでした。
ですから、初めての絵で見たのは、清川あさみ『銀河鉄道の夜』(リトルモア)です。
書店で見かけたときから、とにかく引きつけられました。自分のイメージと重なったのです。絵の作者である清川あさみは、人気アーティストですが、この絵本は彼女の作品の中でも際立っているのではないでしょうか。
作品は、写真をプリントして、その上に糸や布、ビーズやスパンコールで、ときに煌びやかに、ときに温かく映像を描き出しています。この本での作品は、全体に幻想的な雰囲気を漂わせていて実に美しい。
自分のイメージと重なったと言いましたが、多くの人がそう感じるのではないでしょうか。なぜなら、彼女の絵は、頭の中でもやもやとはっきりとしない映像を美化して実体化したかのようだからです。そして、さらにイマジネーションがふくらんでいくのを助けてくれます。
この美しい絵本は、幸せな気持ちの時に開くべきでしょうか、悲しい気持ちの時に開くべきでしょうか。。。
悲しみを含ませた美しい文章と美しい絵。何時読んでも素晴らしい本ですが、やはり、つらいときこそ手に取り、美しい気持ちを得たいものです。
(2010年3月初出、転載・加筆修正)
→清川あさみ『銀河鉄道の夜』
やっぱり本は紙ですよ。ページをめくる幸せを
→角川文庫『銀河鉄道の夜』
ポケットに1冊。この無機質なカバーもイイ