私的に、面白い大河小説というのは、多くの共通点(私にとっての面白い条件)があります。
1.じっくり読ませて(複数巻が必要)、飽きさせない。
2.物語に関係のない描写、つまり時代背景や歴史、街や人々の説明文が、最小限で、テンポ良く読ませること。
・・・これが異様に長い小説は多々ありますが、筆者は読者の無知を確信しているのか、自分の筆に酔っているのかと、疑問を呈しておきたい。
3.2に関係して、時代背景等が、エピソードの中で盛り込まれ、読み進むうちにその時代を理解し、引き込まれていくこと。
4.波瀾万丈でいて、説得力のある事件(事柄)や、その時代にふさわしい人物像が描写されること。
・・・無駄にドラマチックである必要はない。町井の人物を淡々と描いても面白い場合は多い。
これはあくまでも、私個人の話です。
そして、その条件を満たした本の一つが、ケン・フォレット『大聖堂』(全3巻)です。
原題は The Pillars of the Earth 直訳すると、「大地の柱」という感じでしょうか。
中世イギリスを舞台に、大聖堂にいどむ石工とその家族、聖職者を描いた世界的なベストセラーです。
とにかく、面白い。歴史の知識があってもなくても面白いと思います。
中世ヨーロッパにおける教会建築、特にゴシックは、天に向かって高く高くそびえる尖塔を特徴としています。
長い歳月をかけた大プロジェクトであり、重厚で威圧感のある建造物を作り上げました。
一代で終わるような仕事ではなく、様々な障害も乗り越えていく必要があります。
物語の12世紀のイギリスは、内乱で混沌とした政情不安な時代であり、教会も国家の事情に振り回されていきます。
それを、何の後ろ盾もない聖職者が知恵と強靱な精神力で(宗教心は実務とは切り離した現実家)乗り越え、経済的に支え、石工は新しい取り組みとして、技術を創始して素晴らしい聖堂を作ろうとします。
長編ですが、次々と起こる理不尽な出来事に、聖職者とともに憤慨し、ハラハラし、完成するまで、読んでいる方も気が抜けません。
この本を読んだときは、久々に、寝る間も惜しんで、歩くときも読みたい、と思うほど、止められない状態でした。
ですから、この本を読むときのおすすめとしては、休日にゆっくり、傍らにお茶でもおいて他には何もせず、 一日中本を離さないことです。
(2010年5月初出、転載・加筆修正)
→ソフトバンク文庫『大聖堂』全3巻
1冊では終われないと思うが、まずは上巻
→電子版『大聖堂急』合本(1~3)
歴史小説好きなら、一気に買ってしまいましょう!
追記:「キングズブリッジ・シリーズ」として、続編も。これも面白いけど、最初が圧倒的だとは思う。