思い出を掘り起こす「もの」があります。
大抵は音楽だったり、映画であったり、贈られた品だったり……。
そして、私の場合は、もう一つ加えなければなりません。「本」です。
こんなことを言い出したのも、急に秋の気配が強まった今日の空気と、大人が誕生日に抱くアンニュイな気分がそうさせているのです。
さて、こんな日には、思い出深い本を書いてみましょう。
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』です。
出会いは高校生の時。
ちょっと腰が引けながらも進入した大学図書室(当時、母校付属の短大)で見つけ、おそるおそる貸出可能か聞いたのです。
大きくて、立派な装幀。絡み合う2匹の蛇が刻印された本を、宝物のように持ち帰ったものです。
本の中でも、主人公の少年が、「本」に魅せられて、古書店から持ち去り、学校の倉庫に隠れて本を読み始めることから、ストーリーが始まります。
そのはじまりは、私にとっても大量の本で威圧感ある図書室で、大学生たちの大人の目を気にしながら、そっと本を開いた思い出とリンクします。
物語の少年は、本の世界に入っていき、様々な成長を経て元の世界に戻り、自分を変えること、そして愛することを学びます。
しかし、残念ながら、私は世界に引き込まれることはなく・・・当たり前ですが。
このミヒャエル・エンデとの出会いは、その後の自分に少なからず影響を与えました。
そして、その時を前後して、もう一つの出会いがあったのです。
それは、ドイツ・ロマン派の画家フリードリヒです。
日本では有名とは言い難い作家。
私も無知のまま、近代美術館のドイツ絵画展で見て、なぜか印象に残り、後日調べる結果となりました。
ミヒャエル・エンデとフリードリヒ。二人のドイツ人に導かれ、大学ではドイツ語を専攻しました。
・・・エンデを原文で読むため、そしてフリードリヒをケルンに行って見るため。
残念ながら、二つの目標は未だかなってはいません。
それどころか、今に至っては、ほとんとドイツ語を思い出すこともできません。
学校を卒業してずいぶん経ちます。今は、昔以上に勉強したいことだらけです。
写真の本は、最近になって買った岩波少年文庫版です。時々無性に読みたくなるから。
その都度、もう一度勉強しよう、と思います。
そして、埃かぶった図書室にいる、高校生の自分を思い出すのです。
(2010年9月初出、転載・加筆修正)
→岩波少年文庫『はてしない物語』全2巻
追記1:10年以上前に書いたブログ記事を転載したものですが。。。
改めて読んでみても、当時も今も、同じ気分です。
この本は、特別に思い入れのある本で、それにまつわる記憶も、今も大切なものの儘なのです。
追記2:ちなみに、映画版を勧める気はありません。テーマソングは好きだったけど。